来院された患者さんの病気の治療を行うと同時に、患者さんの健康状態全体の把握、健康維持へのアドバイス、必要に応じて他科診療所、病院を紹介していきます。すなわちホームドクターのような形で地域医療に貢献できればと考えています。
一般に耳が痛くなる場合は急性中耳炎・外耳道炎・耳あか(耳垢塞栓)の可能性があります。赤ちゃんが耳を触るしぐさ、いつもにないような夜泣きをするなどの状態が続いた場合には中耳炎の可能性があります。耳から汁(耳漏)がでる場合もあります。
耳内の所見で、鼓膜・外耳道に炎症がないかチェックします。
急性中耳炎は抗生剤の内服・点耳・痛み止めを使用します。治りが悪い場合には鼓膜切開術を行う場合があります。
外耳道炎も抗生剤の内服・点耳・鎮痛剤(痛み止め)を使用します。
耳あかの場合は耳あかをとり除きます。
聞こえづらい場合以下の状態が考えられます。
1 感音性難聴
聴こえの感覚器と同部位から聴こえの神経、脳内の聴こえの中枢のいずれかの異常で聴こえが悪くなる場合があります。多くがこの種類に入ります。
● 慢性的に聞こえが悪い場合
先天性難聴:幼少時より悪い場合
後天性難聴:だんだん聞こえが落ちる場合
● 急に聴力が落ちた場合
突発性難聴:ウイルス性・血行性に聴こえの感覚器・神経障害で起きます。耳鳴り・めまいを伴う場合もあります。
メニエル病:蝸牛(聴こえの感覚器)の中のリンパ液の流れが悪くなり、症状が起きます。耳鳴り・めまいを伴う場合があります。
2 伝音性難聴
(1)鼓膜穿孔:何らかの原因(外傷・中耳炎)で鼓膜に孔があいている場合は聞こえが悪くなります。
(2)滲出性中耳炎:副鼻腔炎・アデノイド増殖症・急性中耳炎を繰り返した場合に鼓膜の内側(中耳腔)に液体が貯まる(貯留)疾患です。この場合も聞こえが悪くなります。
(3)耳あか:耳あかが詰まっていても聞こえが落ちます。
その他 音を伝える骨(耳小骨)の状態が悪く、聞こえが悪くなる場合もありますがまれです。
鼓膜の状態の確認と聴力検査を行います。滲出性中耳炎の場合は原因疾患に対する内服薬の治療、鼓膜切開術で滲出液の排出、それでも改善のない場合には鼓膜チューブ留置術を行う場合があります。慢性化した感音性難聴(加齢性・先天性、その他の病気で聴力が固定したもの)の場合には程度により補聴器の使用を勧める場合があります。中耳炎、外傷で鼓膜穿孔をきたしている場合には鼓膜形成術(鼓膜を閉じる手術)を行うことがあります。耳あかはとり除きます。
突発性難聴・メニエル病の場合は血液循環をよくするお薬、ビタミン剤・ステロイド剤などを使用し、治療を行います。
難聴・耳鳴り・めまいの原因に神経自身に腫瘍(おでき)ができている場合があるため、頭部CTまたはMRI検査を行い、異常がないかチェックする場合があります。(当院はCT)
● 神経系での耳鳴り
聴こえの感覚器(蝸牛)から聴覚中枢(大脳)のどこかの障害で生じます。
キーン、ジー、ピー、モーンなど多種な音がみられます。
● 血管の拍動音による耳鳴り
ドクンドクンという拍動音が聞こえる場合があります。
● 耳管の開放症による耳鳴り
話すと声が響く感じがします。
● 呼吸音による耳鳴り
呼吸音が耳鳴りとして聞こえる場合があります。
まず鼓膜の状態をみます。さらに聴こえの検査を行います。また耳鳴りがどの音に近いか検査をする場合があります。耳鳴りの原因に神経自身に腫瘍(おでき)ができている場合があるため、頭部CTまたはMRI検査を行い、異常がないかチェックする場合があります。(当院はCT)
耳鳴りを完全に治すのはなかなか厳しい場合が多いようです。
ビタミン剤・循環をよくするお薬、安定剤などの内服治療を行ったりします。また耳鳴りの程度の問診を受診時に行い、カウンセリングを行ったり、耳鳴りに対して、耳鳴りより小さな音を聴かせたりすることで、耳鳴りの程度を軽減できる場合があります。
めまいにはぐるぐる回るもの、ふらふらするもの、ふわふわするもの、目の前が真っ暗になり意識が遠のくものなどいろいろあります。耳鳴り・聴こえの低下をきたす場合があります。
● 内耳性めまい:メニエル病・良性発作性頭位めまい症・突発性難聴など
● 中枢性めまい:椎骨脳底動脈循環不全症(血行動態型・完全型)など
● 心因性めまい:気持ちの面からめまい感が出現する場合があります。
なかには脳腫瘍・脳幹部腫瘍・聴神経腫瘍があり、めまいが出現する場合があります。
糖尿病・高血圧・高脂血症・不整脈・貧血などの合併症を伴うとめまいが起きやすくなります。また加齢変化でめまい感を訴える場合もあります。
鼓膜の状態を確認、内耳性めまいがある場合、眼振(眼球が動く)がありますので確認します。さらに脳梗塞、脳腫瘍などがないか頭部CT・MRIなど行う場合があります。(当院はCT)
内耳性めまいであれば、安静・安定剤・ビタミン剤・血液・血液循環をよくするお薬の点滴、内服薬での治療を行います。
中枢性・心因性に関しては原因となる疾患の治療を行います。安定剤を使用する場合もあります。
急に片側の顔が曲がったという場合、顔面神経(第7脳神経)の障害が考えられます。原因はウイルス性・血行性・炎症性・腫瘍性などが考えられますが、多くの場合、ウイルス性や血行性です。ベル麻痺・ハント症候群などがあります。
顔面麻痺の程度、神経の障害部位を確認します。局所に腫瘍・炎症がないか、鼓膜・頸部の状態を確認します。血液検査でウイルス感染・炎症の有無を確認します。顔面神経刺激検査で治りやすさを確認します。さらに脳梗塞・脳腫瘍などがないか頭部CT・MRIなど行う場合があります。(当院はCT)
ビタミン剤・血液・血液循環を良くするお薬、ステロイド剤での点滴・内服薬での治療を行います。
くしゃみ・鼻水・鼻づまり・長く続く場合、また朝起きがけに生じやすい場合には、アレルギー性鼻炎、または血管運動性鼻炎の可能性があります。また明らかに季節性があるもの、外に出歩くと悪化する場合には花粉症の可能性が考えられます。目・のどのかゆみ・下痢などの胃腸症状を伴う場合もあります。
頭が重たい・頬が痛い・頭が痛い・黄色いまたは白い鼻汁が出る場合に、副鼻腔炎(蓄膿症)の可能性があります。痛い場合には急性状態の可能性があります。また何ヶ月(目安は3ヶ月)も継続した場合には慢性化した状態が考えられます。
鼻レントゲン、または鼻CTを撮影します。副鼻腔炎の診断には特にCTが有用です。アレルギー性鼻炎はくしゃみ・鼻水・鼻づまりの症状があること、血液検査でアレルギーの抗体(IgE抗体)が上昇しているか確認します。
慢性副鼻腔炎の場合、まず3ヶ月はマクロライド系抗生物質の半分量での投与・去痰剤の投与・鼻ネブライザー治療を行います。アレルギー合併症例では抗ヒスタミン剤・ステロイド点鼻薬・ステロイド内服薬を使用する場合もあります。それでも治らない場合には内視鏡手術により、鼻の手術を行う場合があります。ただし手術療法だけでは再度症状が悪化する可能性があり、手術後も局所の治療を継続する場合があります。特に喘息症状のある方は治療を気管支喘息と同じように長期に治療する場合があります。
アレルギー性鼻炎の場合には抗ヒスタミン剤の内服・点鼻・ステロイド剤の点鼻を行います。花粉症で目のかゆみが強い場合には抗ヒスタミン剤・ステロイド剤の点眼を行います。
鼻中隔彎曲や鼻粘膜が腫れている場合に形態整復の手術・鼻粘膜切除を行う場合があります。
においの神経(嗅神経)(第1脳神経)の障害またはにおいの感覚器の部位(鼻腔上部嗅裂)の炎症でにおいがしなくなる場合があります。
慢性副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎の可能性があります。
風邪のウイルス感染後、においがしなくなる場合があります。
外傷性(頭を打つ)頭を軽く打った場合でもなることがあります。
その他、加齢変化・薬剤性・心因性も誘因となります。
においがしない原因をとり除きます。風邪のウイルス感染後の場合ビタミン剤の投与、ステロイド点鼻を3ヶ月をめどに行います。においのしない原因が副鼻腔炎の場合手術療法を行う場合があります。
多くは鼻粘膜に豊富に存在する血管が破れて出血する特発性のものです。
季節の変わり目で気候、温度変化の激しいときに症状が出現する場合が多いようです。中には腫瘍などが隠れている場合もあります。鼻腔は奥行きが8cm程度あり、また血管も鼻粘膜には豊富に存在するためどこからでも出血する可能性があります。ただし鼻中隔(左右鼻の仕切り)の前方が約60%と最も多くみられます。
【誘因】
● 全身的
高血圧・動脈硬化で血管が破けやすい、肝機能障害で血液凝固機能に異常・血液疾患(白血病・血液凝固機能異常・その他)、血液をサラサラにする薬を飲んでいて血液が固まりにくい場合などが誘因としてあります。
● 局所的
アレルギー性鼻炎・慢性副鼻腔炎などの炎症がある場合、また外傷で鼻粘膜が傷ついている場合、腫瘍がある場合などがあります。
成人:鼻の後方からの鼻血が子供に比べ多い。
子供:鼻の前方からの鼻血が多い。
短期間であればウイルス性(口内炎・舌炎)などの急性炎症が考えられます。しかし長期にわたる場合、痛い場所にしこりができたり、大きくなる場合には悪性疾患が隠れていることがあります。また長期にわたるもののなかで口内炎が多発したり、全身症状がでたりするもののなかに特殊な炎症(ベーチェット病・天疱瘡・類天疱瘡・扁平苔癬など)内科的・皮膚科的な疾患が隠れている場合があります。
まずは炎症か腫瘍かを鑑別します。そのために1ヶ月程度経過や様子をみたり、軟膏・うがい薬などを使用してもらう場合があります。組織検査・細菌検査・血液検査を行う場合があります。ベーチェット病が疑われる場合は内科疾患ですので内科に紹介します。また天疱瘡・類天疱瘡・扁平苔癬が疑われる場合は皮膚科疾患です。皮膚科に紹介します。
舌に味覚の感覚器(味らい)が存在します。甘い・しょぱい・すっぱい・にがいと、うまみで味として感じとっています。加齢変化・炎症・亜鉛欠乏・乾燥・糖尿病・薬剤性などで感覚器が障害されたり、機能低下をきたすと味覚の低下を覚えます。また心因性でも起こる場合があります。また嗅覚障害があると(においがしないと)と風味障害といって個々の味はしても、物の味として感じられなくなる場合があります。
まず舌の状態を診察します。細菌検査・血液検査を行う場合があります。
飲んでいる薬剤を確認します。
上記のいずれかを鑑別し、治療を選択します。
舌に炎症がある場合はその治療、亜鉛欠乏の場合は亜鉛製剤の内服、薬剤性で中止できるのは中止または薬剤変更、糖尿など基礎疾患がある場合はその治療をきちんと行います。
風邪での咽頭炎・喉頭炎・扁桃炎が考えられます。
扁桃炎の場合、白い膿(膿栓)が付き、高熱がでます。何回も繰り返すことがあります。痛みが長期にわたり、だんだん大きくなる場合(1ヶ月以上)悪性腫瘍のことがあります。
抗生剤・鎮痛剤による治療を行います。
通常は内服薬で治りますが、扁桃周囲まで腫れて(扁桃周囲炎・周囲膿瘍)、抗生剤の点滴が必要な場合もあります。なかには入院して手術療法を要するものもあります。
鼻・咽頭・食道の炎症・貧血・腫瘍などがあった場合に起きることがあります。
まず内視鏡で咽頭のチェックを行います。必要があれば、内視鏡またはバリウム検査で食道のチェック、血液検査を行います。また頸部に腫瘍がないか、エコー・CTなどでのチェックを行う場合があります。
副鼻腔炎・逆流性食道炎・咽頭炎など原因疾患の治療を行います。
咽頭・食道腫瘍・甲状腺腫瘍などがまれにみられます。原因を精査し、必要な治療を行います。(バリウム・食道内視鏡は病院を紹介します)
鼻の炎症・咽頭喉頭の炎症・気管・気管支の炎症・アレルギー疾患でせきがでる場合があります。長期に続くもののなかに、気管支喘息・咳喘息・アトピー咳そうの場合があります。また肺結核・肺癌が隠れている場合もあります。
鼻・咽頭・喉頭の所見をとります。内視鏡検査を行います。鼻が悪そうであれば、レントゲン検査を行います。肺に異常がありそうな場合は胸部レントゲンを行います。血液検査でアレルギー疾患がないかチェックします。
肺・気管支が原因の場合内科での治療となります。
咳止めで治療を行う場合がありますが、それでも改善がない場合はそれぞれの原因疾患の治療を行います。
声帯にポリープ・結節がある場合、声帯に炎症を起こしている場合、また腫瘍がある場合、声を出す神経が麻痺している場合などが考えられます。
声帯ポリープ・声帯結節は声を出す回数の多い方にみられます。
多くは声帯ポリープか声帯結節です。
喉頭ファイバーで局所を診察します。
ポリープ・炎症がある場合は、ネブライザー・消炎剤による治療を行います。
ポリープで3から6ヶ月治療しても改善のない場合には手術療法を行うことがあります。入院が必要な場合、外来での手術が可能なことがあります。
喉頭癌・神経麻痺の可能性がある場合はCTでの頭頸部領域の精査を行います。また組織検査を行います。総合病院での治療となります。
構造的に口蓋垂(のどちんこ)が肥大している、アデノイド・口蓋扁桃・舌根部扁桃が大きいなどの場合があります。また鼻の粘膜が肥厚している・構造的に曲がっている(鼻中隔彎曲症)などの場合があります。
● 閉塞性睡眠時無呼吸症候群
子供の場合、扁桃・アデノイド増殖があり、無呼吸になる場合が多くみられます。なかには副鼻腔炎・アレルギー性鼻炎で鼻がつまり、無呼吸症になる場合があります。成人の場合は、肥満によるものが多くの患者にみられます。
鼻の場合には内服薬・点鼻薬などの治療で治る場合もあります。また炎症で扁桃の肥大がある場合、炎症がとれると治る場合があります。
治らない場合には無呼吸検査を行います。簡易検査では胸郭の動き、無呼吸・いびきの回数・時間・酸素飽和度を測定します。完全検査では脳波・心電図を含めて検査します(病院での入院検査となります)。
咽頭の構造的な異常がある場合、咽頭形成術を行うことがあります。鼻粘膜肥厚・鼻腔形態の異常がある場合は手術的に形成します。
子供の場合は扁桃摘出術・アデノイド切除術を行うと、著明に改善します。大人の場合Nasal CPAP(continuous positive pressure)を行うことで無呼吸の改善が得られる場合があります。
急性に腫れて痛みがある場合はリンパ節炎を含めた炎症性が考えられます。
慢性的に腫れてきた場合は腫瘍が考えられます。
耳の下が腫れる場合は耳下腺腫瘍、下あごの下が腫れる場合は顎下腺腫瘍が、また頸部の真ん中より下方が腫れる場合は甲状腺腫瘍が考えられます。
その他リンパ節の腫れ・その他の腫瘍・のう胞性疾患も考えられます。
画像検査をします。当科ではエコー、病院ではエコー・MRI・CTなどを行います。炎症であれば血液検査します。腫瘍の場合は細胞の検査(吸引細胞診)を行い診断します(主に病院で行います)。炎症の場合は抗生剤の内服や点滴、腫瘍の場合は手術となることがあるため病院を紹介します。